ちょっちミサトさん、その6

「へ、へ・・・へっくしょん!!!

 朝、ミサトは布団でガラスにヒビが入るくらいの大きなくしゃみをした、その巨大な音はマンション中に響き渡る。

「うひゃあ〜、風邪引いちゃったかな〜〜?はっくしょん!

 間髪入れずに大きなくしゃみ、足元に置いてあるティッシュ箱から器用に足指でつまみ取ると鼻をかんだ。

「これは風邪ね、風邪よ風邪」

 自分で額に手を当て確認するとニヤリと口元が歪んだ。

「これは休まなくっちゃね〜〜〜」

 ネルフに行かなくて良い理由ができた、布団をかぶり2度寝を決めこむミサト。

「はあ〜〜極楽極楽・・・はっくしょん!

 くしゃみをしつつ夢の中に走って行く。

 

 

 

 

 

 

 

「ミサトさん、まだ寝ているのかな?」

 それから五分後、台所では主夫のシンジが時計を見て時間を確かめると、いまだに開く事が無い襖を見つめた。

「まったく〜、いい大人なんだから一人で起きてほしいよな〜」

 愚痴をこぼしつつ、エプロンで濡れた手を拭きながら襖を開けた。今月に入って起こすのは・・・数えてもきりが無い。

「ミサトさん、朝ですよ起きてください」

「zzzzzzz」

 布団を被っているので状態はわからないが、寝息と布団が呼吸の運動で上下するので眠っているとわかる。

「ミサトさん!」

 ガバッ!

 シンジは布団を剥ぎ取った、これが一番確実な起こし方である。対ミサト用の必殺技である、ちなみにアスカにすると天国のお花畑を走る事になるので絶対にしない。

「ミサトさん、朝ですよ」

「う、うう〜〜〜シンちゃんひど〜〜〜い」

 体を丸め膝を抱えて眠っていたミサトは布団を剥ぎ取られ身震いした。

「酷いじゃありませんよ、早く起きないと遅刻しますよ」

「大丈夫よ、今日は休むから」

「休む?駄目です、ズル休みはいけません」

「ズル休みじゃないわよ、ちょっち風邪引いたみたいなの。コホコホ」

 ワザトらしく口に手をやると咳きを数回してシンジの同情を引こうとするが。

「クーラーつけっぱなしでそんな格好で寝ていたら誰でも風邪引きますよ」

「そうかしら?」

 シンジは呆れた、部屋はクーラーがガンガンに効いておりミサトはブラにパンティーの男が見たら喜ぶ姿で寝ていたのだ。

「熱はあるんですか?」

「ちょっちね、くしゃみ鼻水咳きがでるのよ」

「しょうがないですね、今日一日寝ていてください。ネルフには僕が電話しておきます」

「サンキュ〜ね」

 シンジが母親、ミサトが小学生の構図である。本来なら逆でなければならないのだが、それは無いだろう。

「お粥作ってきますからパジャマを着ておいてください」

「ふふ、今の姿にクラクラしちゃう?」

 前かがみになると両腕で胸を押さえつけ谷間を強調したが・・・・

「はいはい、わかりました。酷くなっても知らないですよ」

 受け流された、慣れてしまったのだ。襖を閉めると台所に戻った。

「う〜〜〜ん、照れないなんて育て方間違ったかしら?」

 育てていない、逆に育てられているのをミサトは知らない。

 

 

 

 

 

 

「ミサトさん、お粥できましたよ」

「ん〜〜あんがと、あれ?」

 ミサトはホカホカに湯気が立ちこめる一人用の鍋を見つめ、足りないものを見つけた。

「どうしました?」

「私のガソリンが無いわよ」

 ミサトのガソリン、ビールの事である。

「駄目です!」

 即座に一言。

「え〜〜イジワル〜〜〜」

 頬を膨らませて子供のように駄々をこねるがミサトは大人、通用しない。

「風邪を引いているのに飲んだら悪化しますよ」

「しないわよ。むしろ元気になるんだから」

「駄目です!」

 何が何でも飲みたいのだが駄目の一点張り、ミサトは必殺技を放った。

「これでも?ちらっ」

 ブラの肩ヒモを少し摩り下ろすとお色気作戦に出た、男なら一発で撃沈だろう。だが・・・・

「ミサトさん、早く着ないともっと風邪引きますよ、後から薬を持ってきますからそれまでに食べておいてくださいね」

 齢(ピ〜〜)には興味は無いのだろうか?シンジには効かなかった。

「とほほほ・・・・・」

 必殺技が効かずにうなだれるが、シンジが出ていった瞬間口元が歪んだ。

「うふうふふふふ、こんな事もあろうかと」

 布団を動かし、床にあるわずかな隙間に指を入れた。

「えいっ」

 気合を入れて開けるとそこには・・・・

「げげっ?無い?無い無い無い無い!!隠しておいたビールが無くなっている」

 非常時の為に密かに作っておいたビール専用の冷蔵庫、だがそこにはビール一本も無かった。

「さては!」

 頭にある人物の顔がよぎった、奥歯を力いっぱい噛み締めて悔しがる。

「ふふふふふふふ、でもよくってよん!」

 悔しがりから一転また口元が歪んだ。

「こんな事があろうかと第弐弾!」

 ビシッとある一点に指を突きつけた。

「まさか、ここまでは見ないわよね。見たらプライバシーの侵害よ」

 体軽く机の前へ、引出しを開けた。

「リツコ特製机型冷蔵庫!」

 そう机と見せかけて冷蔵庫である、リツコに最高級ネコ缶と引き換えに作ってもらったものである。

「さあて喉を潤しますか、あら?冷たくない」

 手に持った感触が生ぬるい、冷蔵庫の機能を果たしていない。

「ありゃりゃ?電源入ってなかったのかしら?」

 壁のコンセントを見ると挿さっていなかった、ミサトは舌打ちをして自分のミスに腹が立った。

「しょうがないわね、冷えるまで我慢するか。コンセントはっと、あれ?げ〜〜〜〜〜!」

 机型冷蔵庫のコンセントを手に取ると驚愕した。

「さ、先が無い!」

 そう先端部が無くなっているのだ、これではコンセントに挿せない。

「こ、ここまでやるとは・・・・シンちゃん恐るべし」

 、ガックリ肩を落すと希望を失い布団に顔から倒れこんだ。

「うええええ〜〜飲めないなんて、風邪引かなければ良かった〜へっくしょん!!!

 すでに遅し、まだクーラーを切っておらず、下着のままなので風邪は悪化する一方であった。

「はあ、はあ、はっくしょ〜〜〜ん!とほほ・・・」


 夏風邪ですね、暑いからといって下着姿でクーラーを効かせ過ぎるとミサトさんのようになります。

 流石主夫シンジ君、ミサトさんのお色気攻撃なんてヘッチャラ、もう見飽きているのかな?

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION ちょっちミサトさん、その6